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第63回心ぴく映画コーナー

久しぶりの第63回目の心ぴくコーナーです。そして少し遅れましたが、このコーナーのラストに2009年度、巻来功士的心ぴく映画ベストテンを発表します。
この、ほぼ4カ月間に見た映画は、「アバター」「カティンの森」「誰がため」「ミレニアム ドラゴンタトゥーの女」「インビクタス/負けざる者たち」「ラブリーボーン」「サベイランス」「バッド・ルーテナント」「フィリップ、君を愛してる!」「フローズン・リバー」「サロゲート」「ハート・ロッカー」「ニンジャ・アサシン」「奴隷船」「マイレージ・マイライフ」「アーマード武装地帯」「ブルーノ」「クロッシング」「第9地区」「月に囚われた男」の20本です。
今回のしょんぼり映画
「ラブリーボーン」の一本です。
大好きな、ピーター・ジャクソン監督作だったので、かなり期待して見に行った分、落胆が大きかったのだと思います。いいシーンもあったはずですが、ただ見ていて居心地の悪さばかり感じる映画でした。すべてにちぐはぐな感じを受けたのです。
残酷な殺人、ファンタジックな死の世界、突如はじまるサスペンス、あっけないラスト、どれも中途半端な印象を受けました。これまでのすべての作品が好きなだけに残念でたまりませんでした。次回作に期待しますから、監督、傑作をお願いします。
面白映画は7本です。
「誰がため」
ナチに支配されたデンマークの、レジスタンスの英雄の話です。飾り気がない素直な語り口で英雄2人の悲劇を描き切っています。日本人の私には、馴染みがない2人なので出来ればもう少しレジスタンスに身を投じた2人の背景を描いてくれれば、もっと感情移入できたのにと、少し残念でした。
「フィリップ、君を愛してる!」
この作品も期待が大きかっただけに、中盤のユアン・マクレガーとの恋愛シーンからの、少しまったりした、ストーリー展開についてゆけず、眠くなりました。しかしラストのどんでん返しとジム・キャリーのうまさで好印象の映画として終わることができたと思います。
「奴隷船」
懐かしの日活ロマンポルノそのままの印象の愛染恭子引退記念映画です。
日活ロマンポルノファン限定お勧め映画です。他の誰にもお勧めしません。
「サロゲート」
漫画<パーマン>に出てくるようなコピーロボットが主人の代わりに働き、主人は家で寝ているという世界の中で起こる殺人事件の真相をブルース・ウィリス刑事が解明してゆく物語です。しっかりしたSF映画になっていて面白く見ることができました。
懐かしい70年代SF映画の匂いがして、ラストも良かったです。SFファンにお勧めの映画です。
「ニンジャ・アサシン」
身体ずたずた血飛びまくりの現代、殺し屋、ニンジャ映画。
意外に残虐な印象を受けず、最後まで見ることができました。ラストのボスの倒し方を除けば、非常に面白かったです。
ニンジャの登場シーンや、特殊部隊との戦闘シーン、それにもちろん、主演の韓国人スターの身体の動きなど見て損はない映画だと思います。
「サベイランス」
デビッド・リンチの娘の監督作です。
乾ききった世界観の中に、芥川龍之介の<藪の中>的ストーリーが織り込まれている雰囲気の作品です。ラストまでまったく飽きさせません。好き嫌いが分かれるラストですが、
サイコ・ホラーとしては正解のどんでん返しだと思います。私は好きです。
「フローズン・リバー」
この映画も評判がかなり良かったので期待して見に行きました。
アメリカのリアルなプアホワイトの描写で唸らされ、仕方なく始めてしまう犯罪行為と不穏な空気感に圧倒されました。ただラストの救いが少し甘いように感じられたのが残念でした。終わりの印象がその映画自体の印象を変えてしまった。そんなものすごく惜しい作品です。
傑作映画は2本です。
「カティンの森」
90歳近い巨匠、アンジェ・ワイダ監督の家族が、実際に体験した第2次大戦中に起こった国家的犯罪行為を描いた作品です。ポーランドが完全にソ連の呪縛から解放された21世紀にならなければ撮ることができなかった作品です。淡々と描かれる戦争の残酷な現実のむこうに、静かにしかし底なしに深いワイダ監督の戦争への怒りが手に取るように感じられる傑作映画です。ぜひ見てください。
「アーマード武装地帯」
70年代アクション映画ファンの私にはこたえられない一本でした。
ハイパーガンアクション映画と誤解されるような邦題ですが、内容は全然違います。
現金輸送車のガードマン達が強盗に見せかけて金を強奪しようとしますが、目撃者を殺したことから計画に狂いが生じてきます。男たちが七転八倒しながら滅んでゆくそういう渋い映画です。出てくる俳優が、全て脇役が似合う俳優たちで、誰が生き残るのか最後まで分かりません。全ての人間に弱いところがあり、それゆえ非情になれずに墓穴を掘っていきます。私の大好きな設定です。文句なしに面白い映画です。邦題に惑わされずにぜひ見てください。
そして心ぴく映画は大漁10本になってしまいました。
「アバター」映像は当然のごとくすごいですが、裏に隠された反戦のメッセージに唸らされました。
別の価値観を持つ種族を、自分達の利益になる資源を搾取するために攻撃する。ブッシュ政権下のアメリカそのものではないですか。
映画で、主人公たちは国家の正義ではなく自分の正義を信じて戦います。これは私の大好きな、70年代のアメリカ映画そのものです。
ストーリーやデザインが古臭いだのという批判があるようですが私には的外れの意見としか感じられません。
彼らがいう新しい、ストーリーやデザインというのは、おそらくアニメに影響されたものなのでしょう。実用的ではなくかっこいいだけのデザインと、とてもリアルな戦争を描いたとは言い難いロボット戦争アニメ。それしか見たことがなく育った人たちは、ダサく感じるのは当然だと思います。しかし戦争とは非常にダサいものなのです。
半身麻痺の主人公が治療してもらう代わりに傭兵部隊のスパイになる件など、貧乏な青年がイラクから生還したら政府の計らいで大学に入ることができるという現実を表しています。
本当の意味の反戦映画や、テレビドラマが日本人の目の前から消えてしまって、
戦争というとロボットアニメやゲームだけという、恐ろしい状況が生み出した意見だと思わずにはいられません。
考えても見てください。
たとえば「アバター」を日本で作ったとして、日本人だらけの傭兵部隊が、少数民族のエイリアンから逆襲され全滅する。そんな映画をこの国は作れるでしょうか?
おそらく、いや絶対にできません。
それを考えれば、ジェームズ・キャメロンの腰が据わった反戦メッセージが並大抵の事ではないと理解できるはずです。
次回作の被ばくを描いた映画など是非とも日本政府がお金を出してほしいものです。
もうこの国の反戦映画は、なぜか外国人にしか撮れなくなってしまったのですから。
巨匠クリント、イーストウッド監督の傑作<硫黄島からの手紙>が1980年代以降の太平洋戦争を描いた映画のナンバー1の作品なのですから。
そんなことまでも考えさせてくれる反戦SF映画の傑作です。お勧めの心ぴく映画です。
「ミレニアム ドラゴンタトゥーの女」
期待せずに見に行ったら、すごく面白かった。私に嬉しい驚きを与えてくれたスウェーデンの傑作エンターティメント映画です。
旧家で起こる殺人事件、乗り出す脛に傷を持つ正義派敏腕記者と、その監視役の謎の女保険調査員。主人公2人のキャラクターが抜群に面白く、おどろおどろしい歴史に隠された殺人事件の真相が2人の生き様にリンクしてゆくラストは絶品です。3部作になっていて映画が終わった後第2部の予告篇が上映され絶対に見ようと思いました。それほど心ぴくな作品です。ぜひ見てください。
「インビクタス/負けざる者たち」
またまた巨匠クリント・イーストウッド監督の傑作です。
国のために尽くす事とは、私欲を捨て国民と共に困難に立ち向かうことだという事をわからせてくれます。
事実は小説より奇なりというように、フィクションでこんなすごい人物を描いたら絵空事だといわれるかもしれませんが、事実だから感動も本物になるのです。
とにかくネルソン・マンデラの生きざまに圧倒させられました。
アパルトヘイトという非人間的な政策を行っていた国をよくぞここまでにしたものです。
今犯罪が最も多い国といわれていますが、それは本当の民主主義国に生まれ変わるための産みの苦しみの途中だと思える、いや、そう信じさせる南アメリカの初代大統領の物語です。ぜひ見てください。
「バッド・ルーテナント」
ニコラス・ケイジが薬ちゅうの刑事を演じる風変わりな傑作映画です。
前作のバッド・ルーテナントよりも数段上の映画だと思いました。
薬のせいで幻覚がちらちら現れ、それがイグワナやワニで視点がハ虫類側に移るというトンでもなさも大好きでした。
魂が踊る所など最高です。すべてが終わった後のシーンもとてもいいです。とにかく
私の心臓を癒してくれた心ぴく映画の大傑作です。
「ハート・ロッカー」
戦争ハードボイルドの傑作です。
70年代ならスティーブ・マックイーンが主人公を演じたに違いありません。
反戦映画というよりは男の生きざまを描いたアクション映画といったほうがいいでしょう。それほど主人公はカッコいいです。
70年代社会派アクション映画の再来です。
このタイプの映画が大好きな私の心臓をぴくぴくさせてくれた心ぴく映画の傑作です。
「マイレージ・マイライフ」
伊達男のジョージ・クルーニーの意外な演技が、親父心をせつなくしました。リストラをテーマにしていますが、見せ場は違うところにある所など心憎い映画です。
男と女の真実が透けて見える演出は見事です。カップルで見たらこの映画の感想は全然違うものになると思います。
しっかりと人間を描いた映画はそうなるのが当たり前なのです。
男と女は違う考えを持つ動物、身体や心の構造が違う別種の生き物なのですから。
その違いをしっかり描いたからこそ傑作になりえたのです。
男の側から見たらひどい女も、女の側から見たら、男から身体や心を守るための力が弱い女の防衛の行動かもしれない。
そんなことまで考えさせてくれる傑作人間ドラマです。心臓にぴくぴくしました。見終わった後、彼女や奥さんと感想を言い合わないほうがいい、仲が良いままでいたいのならそれだけは注意してほしいと思います。
心ぴく映画超お勧めの一本です。
「ブルーノ」
傑作<ボラット>のサシャ・バロン・コーエンの最新作です。今回はゲイのファッション評論家になってあらゆる人々にドッキリを仕掛けていきます。
アラブでのドッキリはまさに命がけで唖然とします。
それと、同性愛を異常に嫌悪する人々がほとんどのアメリカ南部でのプロレス興行会場、その金網デスマッチのリング上での命がけの男同士のラブシーン、唖然とする観客の表情が爆笑ものです。
サシャ・バロン・コーエンは少しでも他者を差別する団体や個人を笑いものにしていきます。それはまるでコーエン自身の中にある差別意識まで攻撃してゆくかのようです。
だからあれほど命懸けなのでしょうか?
まあそんな堅い事を考えずに、爆笑して、そのあと深く考えたら、自分にも差別意識があることを発見できるかもしれません。そんなに深くて、徹底的にバカバカしい心ぴく傑作映画です。
「第9地区」
シュミュレーションSF映画の傑作です。もしも180万人の宇宙人を乗せた、故障した宇宙船が南アフリカの上空に現れたら・・。もしもその宇宙人を保護するために全てを地上の難民キャンプに移したとしたら・・。そして、もしもそれから20年たって、その難民キャンプがスラム化し、人間のギャング達が闇で商売をやっている最悪な状況の中、宇宙人達が生きる希望を失っているとしたら・・。
そして映画は、その宇宙人達全てを、「第10地区」のキャンプへ移す作業の場面から始まります。
主人公はその作業を請け負う大企業の社長の娘婿で、小役人そのものの男。それと、子持ちの宇宙人。この小役人が意地を見せ始めるラストは圧巻です。これ見よがしに宇宙人と地球人が友情を交わしあうこともない描き方は、まるで判りあえない人種問題を彷彿とさせて見事です。そしてラストのリアルなバトルシーン。人間ドラマ(?)をしっかり描くという基本は、たとえファンタジーやアクション、ホラー映画でも傑作と呼ばれるものには必要な条件なのです。それを見事にクリアした傑作心ぴく映画です。
クライマックス三つ巴の戦いは燃えること請け合いです。見て損はない超お勧め映画です。
「月に囚われた男」
デヴィッド・ボウイの息子が撮った正統派SF映画の傑作です。
登場人物は、月で資源の採掘作業をしている男、ほぼこの1人だけです。
しかし魅せます。飽きるどころか引き込まれます。アイデアが抜群です。
まさにセンス・オブ・ワンダー、将来こうなるであろう人類の未来が、製作費たった5億円の映画の中に凝縮されています。これ以上書くとネタばれになるので控えます。
とにかく見てください。SFとはこれです。舞台を宇宙に移しただけの、ヒーロー物でも、戦争物でもありません。これがSFなのです。心ぴく映画の大傑作です。
ぜひご覧ください。
「クロッシング」泣きました。映画のラスト号泣しました。北朝鮮で暮らす庶民を描いた韓国映画の傑作です。脱北者の人々が実際に体験したことをモデルにして作られているので、まるでドキュメント映画を見ているみたいに人権侵害国家の実態が具体的に語られていきます。
ニュースなどで聞く残虐行為を具体的に見せられ、その恐ろしさに戦慄を覚えます。
全世界の人々に見てほしい傑作です。日本でも是非学校の授業などで見せてほしいものです。
そして話し合ってほしい、どうしてこんな残虐な国家が出来上がってしまったのか。
そしてその国家の人々を救うためにはどうしたらいいかを。
それを徹底的に話し合えば、単純に潰せばいいなどという意見は出てこないはずです。
なぜならそれは太平洋戦争を戦った全ての国に責任があることなのですから。
大きなリスクを請け負っても、その責任は果たさなければならないことなのです。
このまま手をこまねいていれば手遅れになり、かならず不幸はアジア全体に拡大してゆくでしょう。日本も例外ではありません。
とにかく、まず身近な問題として感じるためにこの映画を見てください。
ここに描かれた世界は、人に流され、世間に流されて自分の頭で考えなくなった国民が多数になった我が国の未来の姿かもしれないのですから・・。
とにかく見てください、そして考えることがアジアに生きる1人1人の責任だと思います。
必ず見るべき心ぴくお勧め大傑作映画です。
最後に2009年度 巻来功士的心ぴく映画ベスト10の発表です。
第1位 チェンジリング(第60回心ぴくコーナー参考)同第1位 精神(第61回心ぴくコーナー参考)span style="line-height: 1.2;">第2位 アドレナリン・ハイボルテージ<(第62回心ぴくコーナー参考)同2位 選挙(第61回心ぴくコーナー参考)
第3位 エスター(第62回心ぴくコーナー参考)
第4位 ウォッチメン(第60回心ぴくコーナー参考)

第5位 チェィサー(第60回心ぴくコーナー参考)
第6位 イングロリアス・バスターズ(第62回心ぴくコーナー参考)
第7位 ヘルボーイ・ゴールデンアーミー(第59回心ぴくコーナー参考)
第8位 永遠の子供たち(第59回心ぴくコーナー参考)
第9位 レボリューショナリーロード 燃え尽きるまで(第59回心ぴくコーナー参考)
第10位 ザ・バンク 堕ちた巨象(第60回心ぴくコーナー参考)

  # by mind-house | 2010-04-28 01:43

第62回心ぴく映画コーナー



第62回心ぴく映画コーナーです。今回観た映画は、「96時間」「サブウェイ123激突」「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」「30デイズ・ナイト」「アドレナリン ハイ・ボルテージ」「ドゥームズデイ」「狼の死刑宣告」「エスター」「アンヴィル~夢を諦めきれない男たち」「私の中のあなた」「グッド・バッド・ウィアード」「母なる証明」「スペル」「ホワイトアウト」「イングロリアス・バスターズ」「キャピタリズム~マネーは踊る」「パブリック・エネミーズ」の17本です。
今回のしょんぼり映画は一本
「ドゥームズデイ」
なぜこんなに要らない残虐シーンを入れるのでしょう?
それによってアクションシーンの疾走感が失われてしまい、どうしても盛り上がりに欠ける感じになります。
せっかくの<ニューヨーク1997>ばりの設定にしたのですから、閉鎖された空間内での、サスペンスフルな戦いに期待したのですが・・。
ただ血と残虐シーンだけを見たい人向けの映画です。お好きな人どうぞ。
面白映画は10本
「96時間」
リュック・ベッソン印映画の中では、比較的面白いと感じた数少ない映画の一つです。
しかし、やはり他のベッソン作品と同様に、何のひねりもない一本調子の映画でしたが、
他のベッソン映画と違うところは、主演がリーアム・ニーソンという名優を持ってきて、とんでもない話にリアリズムを出せたことと、1時間半という上映時間の短さが、脚本のアラを感じさせずに観客をラストシーンまで強引に持っていったことでしょう。アクションシーンでリアリズムを出せたことも、やはりリーアム・ニーソンの演技力があってのことだったと思います。
やはりリーアム・ニーソンはすごい役者だ。それを実感させてくれただけでもある意味、貴重な作品です。
「サブウェイ123激突」
私が観てきた中で一本の大傑作(トゥルーロマンス)だけを監督し、後は全てしょんぼり映画だという、トニー・スコット監督の最新作です。傑作「サブウェイ・パニック」のリメイクということで不安だったのですが、まったくの別物になっていてそれなりに観ることができました。しかし中盤までの快調なサスペンスが、後半ぐだぐだになるところはトニー・スコットの面目躍如というところでしょうか。
思ったよりひどくなかったので面白映画に入れました。そんな映画です。
「ウルヴァリン~」
面白そうな、設定と予告編につられて見に行きました。
でも死なない主人公の兄弟同士が、爪で切りあい叫び声をあげるシーンは、観客をワクワクさせるのではなく、なんだか奇妙な感じになりますね。
ずばりいうと、まるでお互いの体を傷つけて快感に浸るSMショーのようでした。
マッチョなコスプレSMショーに迷い込んだような感じ。そんな居心地の悪さが、少しだけ奇妙で面白い映画です。
「30デイズ・ナイト」
傑作直前の非常に惜しい映画です。
吸血鬼が餌場に選んだのが、冬閉ざされたアラスカの町。その中での30日間の戦いとサバイバル。ワクワクする設定です。まず吸血鬼の造形が抜群に良いです。メイクアップ技術なのか、少しでだけCG加工してあるのか、不吉さ抜群の怖い顔をしているのです。必見です。そしてその狂暴さ。とにかく怖い。出だしは抜群に面白いのですが、中盤からの30日という時間の進み具合によっての、ストーリー展開が少しおざなりで、生き残った人々の披露や精神的消耗感があまりリアルに感じられなかったことが、残念なところでした。ラストはなかなか良く、余韻が残るシーンが記憶に残る映画になっていました。
次回作が楽しみな監督作品です。
「グッド・バッド・ウィアード」
韓国版、マカロニウェスタンの怪作です。アクションシーンの演出が、良いです。空撮を多用した、広がりがある場面には唸らされます。
悪党役のイ・ビョンホンと変な奴のソン・ガンホが良いです。とくにソン・ガンホは実質上この映画の主人公で、軽妙で絶妙な演技をみせます。
彼が出たこれまでの映画全てといっていいほど、抜群の演技を披露するとは、まさに天才俳優でしょう。
ただ、惜しいところは、悪党と変な奴に血が通っているのに、肝心のいい奴にまるで人間味がないのです。彼が出てくれば絶対死なないし、危機にも陥らない、判で押したようなつまらない、2流ヒーローものと化してしまうのです。
アクションシーンも物語の設定もいいのに惜しい限りです。
しかし、去年撮られた和製マカロニウェスタン映画とは雲泥の差です。
観て損はない面白映画です。
「狼の死刑宣告」
チャールズ・ブロンソン主演<狼よさらば(デスウィッシュ)>シリーズの原作を基にしてあるということです。主演のケビン・ベーコンはどんな2流映画でもその存在感だけで、最後まで見せきってしまうすごい役者だと再確認しました。けっこうだらだらと続く印象の映画です。報復合戦に新しい面白さはないですが、とにかく何をやりだすかわからないケビン・ベーコンの演技自体がサスペンスフルで、すごいとおもいました。
ただ近頃、~映画をリスペクトしたというような映画が多すぎるように思います。
それが名作映画の精神までリスペクトしていればいいのですが、ただ有名なシーンを真似ているだけの映画が多すぎるように思います。
テーマまでしっかり名作を理解して、シーンを真似すればいいのですが、ただシーンをはめ込んでもストーリーがギクシャクするだけです。
前記の<ドゥームズデイ>など<ニューヨーク1997>や<マッドマックス2>のシーンを真似ているだけの映画になっていました。
この映画もそれほどひどくはないですが、中盤からの全て失ってからの復讐場面からいきなりリアリティが失われ、<タクシー・ドライバー>をリスペクト(?)したシーンが展開します。監督が好きなのはわかりますが、名作<タクシー・ドライバー>は主人公の孤独に裏打ちされた狂気が描かれていて、はじめてラストの銃撃戦が生きてくるのです。
それをある意味単純な復讐物に当てはめてうまくいくはずがありません。
しかしそれでも最後まで見ていられたのは、いい意味で、どんな役をやらせても(今回はエリートサラリーマン)狂気を抱えた演技を見せるケビン・ベーコンの力技なのです。
とにかくケビン・ベーコンがすごい。そんな映画です。
「私の中のあなた」
病気の姉の為、臓器移植用として、この世に生まれた妹が、自己主張して、母を相手に裁判を起こすという実話に基づくストーリー。
さぞかし人間の奥底の気持ちの葛藤を描いているかと思えばそうではなく、皆いい人だったという予定調和で終わってしまった。そこそこの感動作(?)で、限りなくしょんぼり映画に近い作品。
「母なる証明」
<殺人の追憶>のホン・ジュノ監督ということで期待しすぎました。
しかし、最初の場面から、不安感を醸し出す演出は流石で、唸らされる所は随所にあるものの、技巧ばかりが目立ってしまい、結局は、2時間推理サスペンスのどんでん返し版としか映りませんでした。すごく惜しい作品です。
「スペル」
これも、サム・ライミ監督ということで期待しすぎた作品です。
随所に面白描写があるものの、メジャーで撮りすぎたせいか、R指定にしなかった分、サム・ライミホラーに本来あった突き抜けたパワーが薄まっていたように感じました。
これもすごく惜しい作品でした。
「ホワイトアウト」
南極を舞台にした。サスペンスアクションです。ストーリーに目新しいことは無いのですが、主人公の捜査官役のケイト・ベッキンセールが兎に角、良いです。
今、戦っている姿が一番美しい女優ではないでしょうか。彼女だけを見ていればいい映画です。
傑作映画3本です。
「アンヴィル~夢を諦めきれない男たち」
ドキュメント映画です。今は西洋諸国では廃れてしまったメタルという分野の音楽を、今も貧乏をしながらやり続けているバンドを追い続けています。
まだメタルが当たると言われている旧東側の国々を周るツワーの悲惨さが胸を打ちます。
結局、赤字で借金を背負いながら、親友とのわだかまりを超えて新しい夢に踏み出す様は、彼らの周りの温かい人々の応援という感動が、より素晴らしいラストの布石になっていたという、まるでドラマのような展開が、本当にあったことだということで、観客に希望というもの抱かせ大感動で映画は、終了します。その後の彼らを見たいそんなことも考えさせられる傑作です。
「キャピタリズム~マネーは踊る~」
ご存じマイケル・ムーアのドキュメンタリー映画です。
今回は、現在世界に大不況をもたらす原因を作った、アメリカ資本主義社会を描いています。欲望まみれの人々が作った今日の不況の構造が、或る程度理解できました。そして、将来の希望は、資本主義ではなく、本当の民主主義だと説く所で、登場するポリオワクチンの開発者、アルバート・セービン博士が行った、まさに英雄的行為に目頭が熱くなりました。しかし、今回は、明らかにマイケル・ムーアの突撃取材が、少なく、少々物足りなかったことも事実です。心ぴくに限りなく近い傑作です。
「パブリック・エネミーズ」
大好きなマイケル・マン監督作です。
現在、銃撃戦のリアリズム演出においては右に出る者はいないと思います。
この映画でも、それを証明しています。
俳優は全て良く、適材適所の配役も成功しています。
私にとっては、ラストに重要な一言を言うFBI捜査官の面構えで傑作になった映画です。
しかし、なぜ心ぴく映画にならなかったかというと、少しだけ、ギクシャクしたように思えたからです。それは、おそらく、実話の映画化なので、いつものマイケル・マン映画における、男のロマンが薄まった感があるからだと思います。
実話に合わせた為に、主人公でリンジャーの行動や考え方に今一歩共感しずらいとこがあったということも事実です。
だから、事実を大幅に変えた恋人とのエピソードが一番感動する演出になっていたのは、皮肉なところでしょう。やはりマイケル・マン監督はフィクションの名監督だと思います。
しかし真面目な職人監督はラストの素晴らしい盛り上げで、失敗しそうだった、映画を傑作にしてしまいました。やはりすごい監督です。
是非とも次は、心臓がぴくぴくする大傑作を期待しています。
そして第62回心ぴく映画3本の発表です。
「エスター」
サイコサスペンスホラーの傑作です。
少女を主人公にしてこれだけ怖い映画が撮れるアメリカ映画はやはりすごい才能がこれからも出現するという期待感でいっぱいになります。
とにかく子供たちが素晴らしい、そしてけっして激しいシーンではなく徐々に、不安なシーンをお積み上げていく手法は、スプラッターが流行る以前の良質なホラー映画を連想させ、かなり気に入りました。
この監督の前作、<蝋人形の館>の演出を見て只者ではないと思っていましたが、やはりすごい才能の持ち主でした。
本作も大期待の、超傑作ホラーです。スプラッターが嫌いな方でも楽しめますよ。お勧めの心ぴく映画です。
「アドレナリン・ハイボルテージ」
前作、<アドレナリン>をパワーアップした、大傑作エンターテイメントアクション映画の傑作です。前作も心ぴく映画なら、今回は超心ぴく映画と言っていいくらい、全てが過激になっています。そして前作の倍笑わせます。とにかく面白い。
言うことはそれだけの、大大傑作アクションコメディーバイオレンス映画です。
私の、好きな物がすべて詰まっている心ぴく映画の傑作です。是非観てください。
「イングロリアス・バスターズ」またまたやってくれました。タランティーノの傑作が登場です。
<レザボアドッグス><パルプフィクション><キル・ビル>に匹敵するかそれ以上の傑作映画だと思いました。
登場人物が全て良い、復讐の少女、ランダ大佐、ブラピ、SS、スパイ女優、英国兵士、ドイツの英雄、ナチスの面々、ets、練りこんだ脚本と、ギャグ、そして、素晴らしい、場面演出、どでかい顔のシーンでは鳥肌が立ちました。まさに天才技です。
そしてラスト、あの行為に全てが集約され観客を放り出さずに、気持引っ張るとは、この数年観た映画の中で、これほどオリジナリティーにあふれた演出があったでしょうか?
驚きました。
その驚きは、2回映画館に足を運んで、2度目を見て面白さが衰えるどころか逆に、より面白く感じたということでも証明していると思います。
とにかく私は大好きな映画です。また映画館に行こうと思っている、大傑作映画です。
是非観てください。

  # by mind-house | 2009-12-30 00:00

第61回心ぴく映画コーナー

第61回目の心ぴくコーナーです。
今回観た映画は、「チョコレート・ファイター」「スタートレック」「ターミネーター4」「レスラー」「トランスフォーマー・リベンジ」「ディア・ドクター」「美代子阿佐ヶ谷気分」「精神」「選挙」「花と兵隊」「3時10分 決断の時」「GIジョー」「人生に乾杯」「ナイトミュージアム2」「モンスターVSエイリアン」「セブンデイズ」「ノウイング」「セントアンナの奇蹟」の18本です。
まずは、しょんぼり映画8本です。
「ターミネーター4」
なぜか期待したために肩透かしを食ったように思えた映画です。
まず、主人公を2人にする必要があったのでしょうか?
アクションサスぺンスの傑作である<ターミネーター1・2>はあくまで主人公は一人でした。1はサラ・コナーであり2はT-800だと思います。
1は巻き込まれ型ホラーサスペンスであり、2はロボットバトルヒーローものでした。
失敗作の3は前2作のようなしっかりした作品の方向づけができないまま、ただターミネーターの続編だということだけで作られたので、ターミネーター世界の整合性ばかりに目が向けられて、映画本来の面白さが抜け落ちていたように思いました。
4もやはり危惧していたとおり、3の失敗を繰り返してしまったようです。
どう考えても、4はヒーローものにするしかないと思います。出だしからそういうエピソードから始まるのですから。新しい登場人物マーカス・ライトのカッコ良さを前面に出せば成功したでしょう。
死刑囚のマーカス・ライトがなぜ復活したのか?徐々に自分の正体に気付き始めるマーカス、そして脇役である、ジョン・コナーが昔を思い出し友情を温め合う。そしてラスト、派手にT-800(CGシュワちゃん)が1000台くらい群れでジョン・コナーを襲ってくるところに、マーカス・ライトが現れる。
こんな映画を見たかったのですが、かないませんでした。
結論は、やはり映画は監督の腕次第だということです。ジェームス・キャメロン、カムバック。
「人生に乾杯」
老夫婦が銀行強盗を繰り返しているのに捕まりません。
ファンタジーなら分かるのですが、そうではないようで途中で社会問題を訴え、ラストはどんでん返しまで用意されています。作品の色を考えずに撮っているようにみえました。感情移入出来ずに眠気と戦う1時間30分でした。
「ディア・ドクター」
評論家に愛されている女性監督の作品です。
やはり前作<ゆれる>を観た時もそうなのですが、絵作りと雰囲気作りは完ぺきなのに、話作りに無理があると感じてしまいました。私だけなのでしょうか?
どちらの作品も、出だしのシーンはワクワクさせられるのですが、前半から後半にかけて、少しずつ私の頭に?マークが出てくるのです。
映画演出が、徐々にテレビ的演出に変わってしまうようにみえて、リアルではなくなって行くように感じてしまうのです。とくに<ディア・ドクター>のラストシーン、いつのまにか人間ドラマが娯楽エンターティメントに変わってしまいました。それでも好きな評論家は良いのでしょうが、絵作りが完璧だと感じてしまう分、私としては、作品を見るたびに惜しい監督だと思ってしまうのです。
「スタートレック」
アメリカのテレビドラマはタイムトラベルばやりです。
タイムパラドックスなど無視して、ルールを決めないものだから、過去の自分とか未来の自分と平気で一緒の時代に生きていたりします。
この映画もそうです。あの同人物2人はこれからも同時代を生きていくのでしょうか?
そんなところが引っかかる私なのでした。
「セブンデイズ」
傑作映画ばかり見ていたので、韓国映画でも失敗作はあるのだと改めて思い知らされた映画。ストーリーが不自然で、そこを力技で大作映画にしようとしたが、最後は2時間ドラマになってしまった感じの作品でした。
「GIジョー」
激しい(?)CGアクションと、人物紹介の回想シーンの繰り返しが、私の脳みそを眠りに誘ってくれました。ソマーズ監督、傑作<グリード>や<ハムナプトラ2>の感覚をもう一度取り戻してください。ファンなのでお願いします。
「チョコレート・ファイター」
<マッハ>を思い描いていたので、肩透かしを食らいました。
ラストのビルの壁面のバトルは良かったのですが・・・。
「ナイトミュージアム2」
テレビで1を見て面白かったので観ました。
出てくる展示物は多かったのですが、驚きやギャグは半減以下でした。
やっぱりベン・スティラーはお子様向きより、多少毒がある大人向けコメディーが最高に面白いと思います。
つぎは、面白映画2本です。
「モンスターVSエイリアン」
50~60年代のホラーやSF映画、半魚人・ゴジラ(モスラかな)・巨大女・ブロブ(マックイーン最大の危機)などのパロディーが、楽しい映画。
「花と兵隊」
ドキュメンタリー映画です。
第2次大戦のあと、東南アジアから帰還しなかった日本兵の証言を追っています。
心の闇を作りだした地獄の戦場が胸に迫りますが、その証言を引き出すまでが長いと感じました。私は引き出した後を見たかったのですが、苦労している監督自身が画面に出るのはどうなのでしょうか?
その場面に、最初から意味があるような意図が感じられないために、前半は<苦労しているな>と思わせるだけの映像になっていて、すこし損をしていると感じました。
しかし戦争をあまり知らない人には是非とも見てもらいたい映像になっていました。
そして傑作映画2本です。
「美代子阿佐ヶ谷気分」
70年代のガロの作家、安倍慎一の私マンガ(?)を映画化しています。
セックスシーンの雰囲気が日活ロマンポルノの雰囲気を出していてとても懐かしく思いました。最後に出てくる安倍慎一本人の映像には驚かされました。少しぎくしゃくしていますが、とても好きな映画です。
「ノウイング」
近頃のニコラスケイジが主演した映画の中では抜群の出来です。
最初のサスペンスから、一気にラストまで見せてくれます。謎の集団の正体は最初から分かりますが、この映画は謎解きでもアクションでもディザスタームービーでもないので、これでいいのです。
全編に破滅の焦燥感と別れの哀愁が溢れていて、70年代の、<スターウォーズ>以後見ることが少なくなった、正統な滅亡SF映画として成功しています。
お勧めです。
いよいよ心ぴく映画6本の発表です
「レスラー」
史上初と言っていいほどの、アメリカンプロレスの世界の裏側を描ききった傑作です。
それも告発という形ではなく、愛情をもってドキュメンタリーチックに撮っているところが素晴らしい。
昔はヒーローだったが今は落ちぶれたレスラーとストリッパーの恋。
70年代アメリカンニューシネマのファンならよだれ(?)の出るような設定です。
レスラーたちの体を張ったファイトと家族のような仲間意識。
最も大切な人を自分の弱さで裏切ってしまった、どうしょうもない主人公が最後に賭けたファイトの結末は・・・。
とにかく泣かせます。男泣き前回の傑作です。是非観てください。
「トランスフォーマー・リベンジ」
まさにオモチャ箱をひっくり返す事を地でいった映画です。
登場人物達は、男の子の大量のおもちゃに足を取られて転びまくります。
それがとても面白い。どこに何があるかわかりません。
とにかく、画面の端から端まで大中小のロボットと人間、それと兵器が動き回っています。
ある意味男の子のパラダイスと言ってもいいでしょう。
私も男の子なのでそれだけで満足してしまいました。
理由も意味もありません。私はこのスラップスティックロボット活劇が大好きです。
男の子は是非観てください。
「セントアンナの奇蹟」
第二次大戦の話です。ヨーロッパ戦線で活躍した、黒人部隊バッファロー大隊の4人の黒人兵が主役です。
どこまで実話を基にして作っているにかわかりませんが、ドラマを少々作りこみすぎた感はあるものの、それを上回る感動を覚えました。
最後のシーンなど、下手なドラマならベタな泣かせに映るでしょうが、このドラマはそれまでに人の命が簡単に奪われる地獄の戦場をしっかりと描いているので、ちっぽけな正義感が最後に花開く瞬間が愛おしく、とても輝いていて泣かされました。
人は簡単に死ぬ生き物だから、はかなく美しく愛おしいのです。
その対極にあるのが戦争です。
とにかく傑作です。是非観てください。
「選挙」
ドキュメント映画です。
4年前、小泉郵政選挙の時、神奈川で行われた市議会議員補欠選挙で立候補した自民党候補者の奮闘を追っています。
まさにどぶ板選挙の実態が目の前に繰り返されます。
公約など関係なく、名前の連呼と握手の嵐、候補者の立場がその地区の世話人より明らかに下なのには笑わされました。候補者は有権者に頭を下げ、事務所では世話人達に頭を下げ説教に耳を傾けなくてはならないのです。そんな党のロボットのような候補者に、清き一票を与えるなど、本当に民主主義国の選挙なのでしょうか?
候補者は最初から、国民の方ではなく自分の党のお偉いさんの方を向いているのですから・・。ラストまで目が離せない面白くてあきれるエピソード満載の傑作です。
お勧めです。
「精神」
これも<選挙>とおなじく想田監督が撮ったドキュメント映画の傑作です。
岡山にある精神病院に通う患者たちが、素顔で登場します。
病気が重い人、軽い人、さまざまです。
しかしその一人一人が世間話のように語る凄まじい物語が、今の日本の隠された真実を浮かび上がらせます。精神を病んだ彼らをさらに追い詰めているのは、世間という怪物に支配された、近親者、近隣の人々、その地域、そして日本という国そのもの、ということがわかります。日本人の気質は戦前いや江戸時代から変わっていないのかもしれません。世間という怪物に支配された私たちもまた深い病を患っているのです。
しかし観ていて暗い気持ちだけになる映画ではありません。人間の持つ可能性がユーモラスに感じられる場面も多々あります。<カットのおじさん>などのシーンがそれです。
そんないろいろなことを考えさせてくれる大傑作です。是非ご覧ください。
「3時10分 決断の時」
西部劇です。強盗団のボスがラッセル・クロウ、その人物を3時10分のユマ行きの列車に乗せる為に護送を買って出るのが、牧場主のクリスチャン・ベール。
南北戦争により足が不自由のなった男で、借金のかたに牧場を取られそうになったために危険な仕事を引き受ける10代2人の男の子をもつ父親役にクリスチャン・ベールがはまり役です。
追い詰められた父親が最後に下す決断、その演技は、近頃演じたどの役より素晴らしく光っていました。
ラッセル・クロウも今までほとんど演じてこなかった、冷酷無比なボス役を余裕の演技でこなしています。
しかしラッセル・クロウが全編受け身一本で演じてきたこの映画は、ラスト一気に燃え上がります。最後の最後に火を噴くラッセル・クロウの演技、目を見張るように全ての観客の感情をさらっていきます。
そして観終わって残るのは、クリスチャン・ベール演じるところの父親の意地と、銃の天才ながら失った何かを見つけるために、流離うしかない男を演じるラッセル・クロウの感情。よほどの傑作しか成しえない見事に両雄並び立っている映画でした。
男の意地がぶつかり合う、近頃ほとんど見られなくなった、大人の骨太アクション映画の大傑作です。とにかく見てください。超お勧めの映画です。

  # by mind-house | 2009-08-22 20:33

ニューカマー第5巻発売

7月9日(木)
NEWCOMER 来たるべき者達-第5巻 (バンチコミックス新潮社刊)が発売されました。
第1部完結編です。是非その結末に驚愕して下さい。ご一読を!
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  # by mind-house | 2009-07-09 00:42

第60回心ぴく映画コーナー

第60回の心ぴくコーナーです。
今回は連載終了やその他もろもろの出来事などで前回よりかなり時間が空いてしまいました。
というわけで今回観た映画は「チェンジリング」「イエスマン」「ウォッチメン」「13日の金曜日」「ドラゴンボール・レボリューション」「ロックンローラ」「ワルキューレ」「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」「フェイクシティー ある男のルール」「ディファイアンス」「チェイサー」「グラン・トリノ」「天使と悪魔」「レイチェルの結婚」「ブッシュ」「セブンティーン・アゲイン」「消されたヘッドライン」「パニッシャー・ウォーゾーン」「バンコック・デンジャラス」「ザ・バンク 堕ちた巨象」「スラムドック$ミリオネア」「バーン・アフター・リーディング」「新宿インシデント」の23本です。
今回から、しょんぼり映画、面白映画、傑作映画、心ぴく(傑作過ぎたり、好き過ぎたりして心臓がぴくぴくしてしまった)映画と4段階に分けて発表したいと思います。
まずしょんぼり映画5本から
「ロックンローラ」相変わらず同じことをやっているがイ・リッチー監督作品。
お好きな方どうぞ的映画。
「バンコック・デンジャラス」
出だしの主人公の殺し屋(ニコラスケイジ)が、自分の流儀を語るシーンはクールに決めていて期待しましたが、物語が進みだすと簡単に流儀を捨てる主人公に唖然としました。
何これ的映画。
「ドラゴンボール・レボリューション」どうしてこんなことになってしまったのだろう的映画。
製作費は実際にどの位かかったのだろう?ハリウッドとの交渉がどれだけ難しいか想像できる映画。
「ワルキューレ」エンターティメントにしたかったのか、実録物として人間を見つめた作品にしたかったのか、どっちつかずの作品。トム・クルーズ扮するドイツ人将校を最初からヒーローとして描いているのなら、ラストは大胆に変えてもいいと思いました。
「ディファイアンス」これも、第二次大戦の実話を基にしているということですが、やはり「ワルキューレ」と同じように観ているこちらとしては居心地の悪さを感じました。
主人公がダニエル・クレイグなので、人間の情けなさを表現するシーンでも、どうしてもジェームス・ボンドのようなヒーローに見えてしまうのです。だから中途半端感が否めない作品に見えてしまいました。ラストも兄弟の友情が勇ましく描かれている分、実話から遠ざかり、さりとてエンターティメントとしての突き抜けた面白さがあるわけでもなしの、そんな作品になっていたと思います。
ということで
面白映画11本です。
「イエスマン」久しぶりのジム・キャリーのコメディー作品。
単純に楽しみました。ただラスト楽しきゃいいじゃん、というアメリカ的楽観主義がみられて、それがどれだけ世界を混乱に陥れているのかわかってんのか!と突っ込みたい気持ちにもなりました。そんな映画です。
「13日の金曜日」
ジェイソンが出てこない第一作目のリメイクかと思いましたが。しっかりとジェイソンが出てきました。説明が全くなく、殺しの場面と緊張感とお色気だけでラストまで持っていく手腕はたいしたものです。助走をつけたジェイソン斬り(?)はなかなか良かったです
「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」
前半から中盤にかけては、なかなか面白く見ることができました。ただ後半が駆け足だったように思いました。やはりデビット・フィンチャー監督の持ち味は、恐怖とカオスのせいか、こんなホラ話に必要な、人間の愛すべき滑稽さが描かれていなかったように思いました。だから観終わった後に何も残らない映画になっていたように思います。
惜しい映画です。
「天使と悪魔」
原作を無理やり縮めたような映画。とにかく忙しい。前作(ダヴィンチ・コード)で描かれていたラングルトン教授の閉所恐怖症性格描写がなく、まるで銃を持たない007のようになってしまっているように思いました。ただ最後まで飽きさせない描写が続くので、
前作より面白く見られたので、ここに入れました。
「新宿インシデント」
出だしの密航船が浜に打ち上げられている描写がなかなか良く、映画に引き込まれました。
1990年代の歌舞伎町で実際に起こった事件を基にしているので、それなりにリアリティーがあり、ジャッキーチェンが主演とは思えない凄惨な展開も必然性があり、最後まで面白く見ることができました。
「フェイクシティー ある男のルール」
面白い現代ノワール映画です。しかしどうしても同じロバート・エル・ロイ原作の傑作(LAコンフィデンシャル)と比べてしまい、ラッセル・クロウの役をキアヌ・リーブスが演じているとしか思えませんでした。
だからラストは(LA~)なみに派手さを期待したので、多少肩透かしを食らったような感じです。しかし最後まで楽しめたのは事実です。ハードアクションや深作欣二ファンにはかなりお勧めの映画です。
「グラン・トリノ」
あまりにも期待しすぎていたので、そこまで傑作と思えませんでした。
しかし面白い映画であることは事実です。
題名を<ハリー・キャラハンの晩歌>に変えてもいいかなと思いました。
多少セルフパロディーが入っているところが笑えました。軽く見て非常に楽しめる、
面白感動映画です。
「セブンティーン・アゲイン」
36歳のオヤジが、17歳の体に戻り、もう一度高校生をやり直すというストーリーが、親父の私の感性に触れ見に行きました。単純に面白かったです。
ただイケメンの主人公ザック・エフロンが、たった20年であんなに顔が変わるわけはないと思うのですが・・。 そんな映画です。
「消されたヘッドライン」
出だしからぐいぐい引き込まれ、傑作の予感がしました。
新聞とアメリカ政府の攻防、そして浮かび上がる、最高権力者の犯罪的行為。観客は現実社会が今おかれている恐怖を思い知る。そしてエンドロール。
となれば傑作だったのですが、ラストに不必要と思われるどんでん返しを用意したから、
その恐怖が薄れ、ただのミステリーとして終わってしまったところが非常に残念でした。
どの俳優も熱演していただけに残念です。傑作になり損ねた面白映画です。
「バーン・アフター・リーディング」ブラックコメディーの面白映画です。登場人物すべてがどこか変です。コーエン兄弟の前作<ノー・カントリー>の丹念な作りこみを失くしてテンポに重点を置いたらこうなった、というような作品です。ブラッド・ピットのにやけた笑いが最高です。
その印象的な笑いの後の怒涛の展開は流石コーエン兄弟、本領発揮です。
どんな映画にでも、情や温かさを求める人にはお勧めしません。
ドライなスラップ・スティック映画です。筒井康隆ファンにはお勧めの面白映画です。
「スラムドック$ミリオネア」
面白いエンターティメント映画です。偶然の連続で進むストーリー展開には笑えましたが、インドのスラムロケには息をのむ迫力がありました。 
近頃スランプ気味のダニー・ボイル監督の起死回生の一発的面白映画です。
ラストのエンドロールが微笑ましい。イギリス映画です。
そして傑作映画3本です。
「ブッシュ」面白い。私はかなり気に入りました。
ブッシュ・ライス・チェイニー・パウエルなど結構みんな似ていたし、ブッシュ大統領在任中にこんな映画を撮れるという、アメリカ映画界の底力を見た思いがしました。
我が国でもし現役総理大臣の映画を撮ろうとしたら・・。
悲しくなってきます。我が国は本当に民主主義なんでしょうか?
そろそろ国民一人一人が真剣に考える必要があるのではないでしょうか?
そんなことを考えさせられる傑作です。お勧めです。

「レイチェルの結婚」
かなりいい映画です。
全編手持ちカメラの映像が、最初の方は鼻について、なかなか映画に入っていけませんでしたが、中盤から監督の意図するモノがわかり、ぐいぐいと物語に引き込まれていきました。アメリカの普通の人々の普通の結婚式を見事に演出した映像には脱帽させられます。
最後まで、冷たいほどの美しさのデボラ・ウィンガーが見事です。
お勧めの傑作です。
「パニシャー・ウォーゾーン」
お好きな人だけお勧めの、超残虐アメリカ必殺処刑人アクション映画です。
思いきりよくこれだけやってくれると逆に爽快感が出てきます。
パニッシャーは3回目の映画化です。前2作とは格段の差でこちらが面白いです。
これでもか、これでもかと続く残虐アクションの連続と敵の醜悪さは、ほとんどギャグの域に達しています。やはり筒井康隆的スラップスティク好きにはお勧めの傑作です。
最後に第60回心ぴく映画4本の発表です。
「ザ・バンク 堕ちた巨象」
日本の平和ボケした環境に慣らされ、政治に無関心な人々には、へたなアクション映画としか思えない、傑作アクションサスペンス映画です。
主人公はインターポール(国際刑事警察機構)の局員です。ただのアクション映画では007よろしく治外法権的に犯罪者を颯爽と逮捕する彼らの、切ない現実が描かれて興味をそそられます。
登場する巨大銀行も現実に存在した銀行なので、世界金融マーケットのどうしようもない闇が赤裸々に描かれて恐怖しました。
そして、重要な役割を担う魅力的な殺し屋たちの描写。
久し振りでアウトローのカッコよさを堪能した映画でもあります。
ヨーロッパ、アメリカ、とくにラストのトルコロケの素晴らしさには息をのみました。
国際政治のことに少しでも興味があるアクションサスペンス好きにはたまらない傑作です。是非観てください。

「チェイサー」面白い。一気に作品世界に引きずり込まれ、主人公とともに地獄に落とされていく
韓国映画の傑作です。実話の猟奇殺人事件をモデルにしている点は、やはり傑作の<殺人の追憶>がありますが、この映画も劣らないほどの傑作になっています。
<殺人~>より多少荒削りな演出ですが、一人の男の執念を描く手法としては成功していると思います。
後半からラストの観客を奈落に落とす演出が徹底されていて、これぞ一流の作家性を持った監督の仕事だと改めて思い知らされました。それに比べて我が国の大人に成り切れず、ましてクリエーターにもなっていない監督のテレビ映画の数々、それをありがたく拝観する観客、まさに日本だけが特殊な地獄に陥っていると思うのですが・・・。
とにかく、今の日本映画に無くなってしまった映画の風格、凄味がこの映画にあります。少しでもまだ映画に愛情がある人、とにかくお勧めです。
ラストの男と男の情念の大バトル、圧巻です。
是非観てください。傑作です。
「ウォッチメン」究極のヒーロー映画の傑作です。
<ダークナイト>がノワールの世界をヒーローもの融合させた傑作だとすると、この映画は、東映ヤクザ物のいかがわしさと純粋なSFを融合させた、情念ヒーローものの傑作という感じでしょうか。そんな魅力的な作品です。
もしも現実社会にヒーローがいたらという思考実験にもなっていて、ケネディ暗殺や、ベトナム戦争、レッドパージなど数々の実際に起こった事件が描かれています。
これも羨ましいところで、今日の日本映画では出来ない(面倒くさくて興行収入に繋がるかどうか分からないのでやろうとしない)ところです。
この映画には数々のヒーローが出てきますが、陰のヒーローはロールシャッハという大きなトラウマを抱えた男で、情念あふれる男の生きざまを見せてくれて泣かされます。
そして陽のヒーローというか究極のヒーローというか、まさに神といえるほどの力を持ったヒーローがDr.マンハッタンです。
このマンハッタンが火星に想像する建造物がまさにSFです。センスオブワンダーの世界なのです。近頃観たSF的設定のどの映画がよりSFしていて嬉しくなりました。
その前にSFしていて嬉しくなったのは、10年以上前の<ダークシティー>が最後だったように思います。それくらい私的には、素晴らしいシーンでした。
必要以上に残虐なシーンもありますが、その粗削りな展開もこの作品の魅力になっていると思います。
これからアメリカのヒーロー映画は<ダークナイト>とこの<ウォッチメン>によって目が肥えた観客のおかげで、標準以下の駄作は作られなくなるのではないかと思われます。
そんな、ヒーローものの水準を押し上げた大傑作映画です。お勧めです。
「チェンジリング」
クリント・イーストウッド監督作品の中でベストの一本だと思います。
私は感情移入しまくり、ラストには泣いてしまいました。
アンジェリーナ・ジョリーが演じた母親の芯の強さ、子供を思う切なさ、真実を見つめるまなざし、とにかく心臓がぴくぴくしまくりでした。
アンジェリーナ・ジョリーの演技もこれまでのどの演技よりも素晴らしかったと思います。
しかし息もつかせず最後まで見せきる演出のすごさは、今世界中の監督の中でイーストウッドが一番でしょう。
まさに人間ドラマ・サスペンスはこう撮れというお手本になっています。
演出的に決して暴走せず、抑えが効いていて、盛り上げる時は人間の感情の盛り上がりとともに効果的に行う。本当に素晴らしいです。
母親が権力との戦いで成長する過程を丹念に見せ、最後に見せる人間としての強さ、思いだすと泣けてきます。俳優は当然の如くみんな素晴らしく、とくに後半、犯人と母親アンジェリーナ・ジョリーの1対1の会話(演技合戦)は息もつけないほどのシーンになっていて忘れられません。
これが78歳の監督作とは信じられません。作品が進化し続けて、昨年より今年、来年とより前作を凌ぐ傑作を生み出し続けているのです。
とにかくこの天才監督の次回作に期待するばかりです。
是非見てください。私が今年見た映画の中でベスト1の作品です。

  # by mind-house | 2009-05-24 23:20

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